そのセミナーの大きなテーマは搾乳をしているお母さんの思いというものでした。
研究の対象になったのはチュレーン大学内で働く教授、スタッフ、勉強する学生の中で赤ちゃんを完全母乳で育てるために学内で搾乳をしている方々(30名ほど)です。
ここでなぜ完全母乳と搾乳が関係があるか説明します。
多くの方がご存知のように国際保健機関では生後6か月まで赤ちゃんを母乳のみで育てることを推奨しています。これを完全母乳といいます(略して完母)。母乳にはたくさんの栄養や病気を防ぐための抗体が含まれているためです。6か月以降も離乳食を導入し、可能であれば2歳くらいまで母乳を推奨している国が多いです(以前投稿したIYCFのブログをご覧のとおり、赤ちゃんと乳児の栄養についてリサーチアシスタントして研究をしてきたのでこの分野は人より詳しいです)。
その完母を続けるにあたり、働くお母さんたちは職場や学校で一定時間を空けて搾乳をする場合が多いです。胸が母乳で張ることや搾乳し続けなければ母乳が止まっていまい完母ができなくなることがあります。
話の内容をもとに戻します。今の大学では6週間の産後休暇が一般的で、職場に復帰し搾乳をする方がたくさんいます。大学には10数か所以上Lactationルームと呼ばれる母乳の部屋が設置されています。赤ちゃんに母乳をあげたり、搾乳ができる部屋です。
そのLactationルームや職場のオフィスで搾乳をすることをどう思うかが研究内容だったのですが、インタビューに答えた多くのお母さんが赤ちゃんのために搾乳することは使命であるし最低1年を続けることが私のゴールであるという声が多数でした。搾乳は苦痛ではないという人がいた一方で、うまく搾乳ができない、ストレスという負の意見もあり研究のインタービュー中に泣き崩れてしまうお母さんが結構いたそうです。
印象だったのは6か月の赤ちゃんを育てる医学生のお母さんは病院実習中に時間通りうまく搾乳できず、指導者の医師に搾乳したいと言えずどうしたらいいのかわからないと泣き出したという話でした。
気がつけば私の仲がよいPhDの同期もみんなで総合試験の勉強中搾乳をしによく席を外していたなと思います。タイの研究所でもオランダ人同僚の医師は難民キャンプで堂々と搾乳していました。
ふと考えてみたのが日本では搾乳って一般的なのかどうか。
赤ちゃんを育てる日本居住する数名の友人のうち、全員6か月以上の育休をとっているか職場を退職しています。子どもが1,2歳になりパートで復帰というパターンが結構多いです。おそらく私の友人たちは職場などで搾乳したことはないと思います。そして私の中で日本でLactation Roomがある企業ってどのくらいあるのか疑問です。
もう5年以上前になりますが少なくとも今まで勤めた病院にはLactation Roomなんてなかったような気がします。気になって日本語でインターネットでも”職場での搾乳”について検索した結果、職場で搾乳専用の部屋がない、上司に搾乳するために職場を少し抜けたいと相談すると長く育休をとるように勧められたなどの多くのマイナス意見がありました。
なんて後進国なんだ日本。。。
アメリカでは子どもを産んで仕事を辞めてしまう、パートになるお母さんは少ないと思います。今の大学院内でも最近女性の教授(42歳!ちなみに彼女の初産は38歳でした。大学院では晩産が普通です)が春に3番目の赤ちゃんを出産する予定であることを知りました。もちろん彼女は産後休暇後復帰します。2番目の赤ちゃんと同様に職場で搾乳されると思います。よく2番目の赤ちゃん出産後にはオフィスの前に( Please don't disturb. I'm pumping:搾乳中なので訪問ご遠慮ください)と書かれていました。
日本もキャリアを中断したくないお母さんたちのために搾乳専用の部屋を職場で設けることを法律で義務化したり、お母さんたちがいつでも気軽に搾乳できる環境を作ればと思います。女性が輝く日本と掲げるのであれば早期の職場復帰、搾乳を推進しないとだめだと思う今日この頃です。
こういう貼り紙が日本中の職場にあればいいのになあ。
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