2017年1月28日土曜日

移民を受け入れる国、アメリカ

春学期がはじまってから忙しく毎日を過ごしていました。この学期は前半にティーチングアシスタント(TAとも言われる教授の授業補助。担当クラスは国際保健のモニタリングのクラスです)、リサーチアシスタント、博士論文の執筆を同時進行しているので毎日忙しく過ぎ去っています。

トランプ氏が就任してからおよそ一週間が経ちました。次々と大統領令に署名するトランプ氏。トランプ氏が大統領に当選してから大学本部や大学の留学生オフィスから「この選挙で動揺している学生がいると思いますが、大学は君たちと一緒です。精神的カウンセリングが必要な場合はXXXXまで電話してください。」とEメールをもらったり、今日は留学生オフィスから「トランプ大統領が新たに移民令に署名し、出身国によって学生のアメリカへの入国が制限される可能性があります。ここ数日間、留学生はアメリカから出国することを控えてください。入国できない場合があります。アメリカ国内でも外出時は身元証明書を常に持参してください。」などの通知をもらったりします。なんだかアメリカ、大変なことになったなあと肌で感じています。

どの米国のメディアでもトランプ氏のニュースは毎日トップなのですが、その中でも特に気になるのは中南米からの移民についてです。

トランプ氏の公約のひとつであるメキシコとアメリカの国境に大きな壁を作り、不法滞在している移民(特に中南米出身)を強制送還させるという話があります。それに沿ってNew Yorkタイムズで不法移民としてメキシコからアメリカへ両親とともに幼い頃に渡り、給付の奨学金をもらい大学まで進学した女の子の話が書かれています(‘The Only Way We Can Fight Back Is to Excel’)。記事では彼女のお母さんが南部のアメリカの州で運転をしているときに事故を起こし、運転免許証と合法なパスポートを持たないためお母さんだけ強制送還されそうになった時の話や、トランプ氏が大統領になって女の子が今後アメリカで勉学を続けていくことができるのか不安であるという内容が書かれています。

この女の子だけでなく、アメリカに住む多くの不法移民はトランプ氏の政権に不安を感じていると思います。ニューオーリンズにも不法で滞在している中南米からの移民がたくさんいます。多くの人が低賃金でレストランや清掃業で働いています。

このNew Yorkタイムズの記事を読んで驚くべきことに厳しい意見がたくさんありました。記事の中で一番多かった一般読者からのコメントは「法律で定められているのだから不法滞在は許されるべきではない。法律は破るためにあるものではなく強制されるものである。」というコメントです。

私は記事を読みながら私自身に問いかけていました。答えは未だわかりません。

日本でも似たような事例がつい最近ありました。タイ出身の母親が不法滞在中に男の子を生み、男の子が成長し10代まで日本に滞在し続け、男の子自身が日本でこのまま大学へ進学するための裁判を起こすというニュースがありました。結果は敗訴でした。

私もどの国でも法律は守られるべきだと思います。ただ私がメキシコやグアテマラ出身だったらアメリカ国境を命がけで渡り不法滞在するかもしれません。悪いと思っていてでも。タイとミャンマー国境を渡るミャンマーからの不法移民も同じ環境です。

それはアメリカやタイという先進国の方がお金を多く稼ぐことができ、安全でよい教育、保健医療を受けられるチャンスがあるからです。世界の不平等な状況が続き、グローバル化が進む今、この問題を解決するのは難しいでしょう。

5-6年前に観た映画「闇の列車、光の旅」は中南米出身の移民がどのようにしてアメリカに渡ってくるのかをとらえた映画です。移民問題に興味がある方はぜひチェックしてみてください。



2017年1月5日木曜日

Hacksaw Ridge

新年あけましておめでとうございます。映画のタダ券をいただき、新年早々にHacksaw Ridgeという映画を夫と一緒に観に行きました。この映画は今年の夏頃に日本で公開される予定です。


第2次世界大戦の沖縄地上戦を舞台とした映画でメル・ギブソンが監督をつとめています。アメリカ人の視点で描かれており、沖縄で武器をひとつも持たずに何十名もの負傷したアメリカ兵士を助けたデスモンド・ドス衛生兵士の物語です。ドス兵士役のアンドリュー・ガーフィールド(スパイダーマンの主役をしていた俳優です)の演技がとても自然で映画に引き込まれてしまいました。実際にあった話でドス兵士はのちにアメリカの大統領から名誉勲章をもらっています。

まず映画の主人公ドス兵士。彼は戦場で犠牲になる米国兵士を救うためにメディック(看護衛生師)になるのですが、戦場に行く前にミリタリーキャンプで兵士としての訓練を受け、武器として銃を持つように大佐から指導を受けます。しかし彼はプロテスタントのキリスト教徒で、武器を使って身を守り、まして敵の兵士(日本兵)の命を奪うのは神の教えに反すると意志を曲げず、周りの同僚、上司からいじめを受けても屈することなくそのまま戦場の沖縄へ行きます。

想像を絶するほど残酷で悲惨な沖縄での戦場。周りの同僚兵士がつぎづきと撃たれけが負い、生死をさまようなかで武器ももたず、自分の命を顧みずに他人の命を助けるために戦火を走るドス兵士。

私の英語のリスニングが正しければ、ドス兵士は負傷し生きのびた日本人兵士をも映画の中で助けていました。

私はこの映画の中で信仰の有無に関わらず、他人の命のために危険までおかして最後まで自分の信念を貫き通すことについて考えていました。今、私はFaith(信念、誠意)を持って人のために何かできるだろうか。難民の健康のために博士課程まで進学し公衆衛生を勉強しているけれど、名誉や地位を考えるのではなく、どうすればよいかFaithを持って戦火や迫害から逃げてくる難民のために今後の私の人生を生かすことができるのかと考えていました。

この映画が日本で公開されれば日本人の方々の感想が気になります。おそらく沖縄で犠牲になった日本兵のことにほとんど触れられていないので、残念だと思う方はいるかもしれません。ただこの映画は戦争の醜さや残虐さが痛いほどに鮮烈に伝わってくる作品であり、暴力だけの世界では悲しみしか生まず、他人を思う気持ちの尊さを問いかけてきます。気になる方はぜひご覧ください。こちらのリンクはハクソーリッジの予告